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Oyatsu Aoiさん・Sugar & Wheatさんインタビュー(前編)

【ヒューストンでスモールビジネスをするということーーー】


ヒューストンで和菓子・パンの販売をされているOyatsu Aoiさん、Sugar&Wheatさん。お二人から伺った、この地のご活動のあれこれを、前後編に分けて掲載します。


おたすけマップメンバー(以下「お」):

今日はお時間をいただきありがとうございます。現在お二人はヒューストンで和菓子やパンを販売されているとのことですが、具体的にどのようなご活動をされているのか教えてください。

Oyatsu Aoiさん(以下「OA」):

私はもともと日本で和菓子を販売をしていたのですが、2022年にヒューストンにきてからポップアップストア形式で和菓子の販売を始めました。加えてオーダーベースでのご提供も行っています。他にも、ワークショップの依頼があれば実施することもあります。


お:ワークショップは、どのような内容ですか?

OA:現地の高校の日本語クラブで、課外事業の一環としてどら焼きのワークショップを行いました。どら焼きや日本の和菓子について紹介してから、作り方の実演をして、その後、希望する生徒は自分で焼いてみてもらいました。どら焼きはパンケーキに近いイメージがあるので、アメリカの生徒たちにも抵抗なく食べてもらえましたし、自宅でおやつを作るのが好きな子たちが多く、楽しんで実践に参加してくれました。様々なご縁もあって、そういった活動の機会もいただいています。


お:それは楽しそうですね!あやさんのご活動についても教えてください。

Sugar & Wheat あやさん(以下「SW」):

私も現在はポップアップが主で、インスタグラムでオーダーを受けたりもしています。ポップアップは日本食スーパーなどで定期的に実施していて、あとはイベントに出店したりもしています。



お:葵さんは渡米当初からポップアップをやろうと思われていたんですか?

OA:いえ、アメリカに来たのは夫の仕事がきっかけです。でも、ここで手に入る和菓子は冷凍のものや残念なクオリティのものばかりで、物足りない。そこでアメリカでも自分で和菓子を作るようになって、改めて日本のおやつ文化を広めたいと思い、売れる場所があったらいいな、と考えるようになりました。


お:あやさんはいつ頃からこちらでパンを作り始められたのですか?

SW:Sugar & Wheatとしての活動は2019年、カリフォルニアにいる時に始めました。ポップアップの本格的な活動は2021年の春からです。

私がアメリカに来たのは2000年代で、その頃は本当に日本のものが手に入らなかった。パンもクオリティが一向に上がらず、味も酸っぱいし、何故かカビないのでちょっと怖かったり。今でこそ西海岸やニューヨークには少しずつ日本のパン屋さんが増えていますが、ここヒューストンにあるものはどうしても何か違う。台湾や韓国系のパン屋さんも増えてはきましたが、日本のパンとはまた少し違うんですよね。

それで、もともと好きだったパンを独学で作り始めました。アメリカでパン作りを教えている日本人の方にアドバイスをもらったり、日本に帰国した際はクラスを受講したりもして、レシピの作り方を教えてもらいながら少しずつ学んで、自分の好きなパンが食べたい!という気持ちで進んできました。



お:お二人とも活動開始のきっかけは「日本のこれが食べたい、ここにあればいいのに」という気持ちだったんですね。どのような経緯で一緒にご活動されることになったのですか?

SW:私の活動を、日本から来られたあおいさんがインスタグラムで見つけてくれたんです。それでポップアップに来てくれて、和菓子を作っているんだという話をしてくれて。

OA:ヒューストンで和菓子の販売を始めるにあたって、規制や許可など、何が必要でどこから調べたらいいかも分からず、これは誰かわかる人に聞いた方がいいと思っていた時に、インスタグラムであやさんのご活動を見つけて、実際にポップアップへ行って、ノウハウを教えてください、と話しかけたんです。

SW:そこからお話しして「一緒にやってみようか」という流れになりました。


ポップアップの様子。たくさんの商品が並ぶ。



お:お二人ともすごい行動力ですね。こちらで食品を販売するにあたって、色々な障壁があると思います。日本と米国だとどちらが厳しいと感じられますか?

SW:私は日本の実家が飲食店経営なんです。実店舗を出すのは日本の方がかなりハードルが低くて、小さい店舗を出すのにそこまでの制限はないし、店舗も見つけやすく営業許可も取りやすい。アメリカはかかるお金が桁違いですね。まずテナントの家賃からして全然違います。

OA:日本だと、ポップアップだけというやり方はまず出来なくて、イベント等に出店しているのも店を持っている人たちなんです。店を持つこと自体は日本の方が簡単で、こちらは店を持つまでのハードルが高すぎる。逆に言えば、店を持たずに、ポップアップの範囲でやるレベルなら、アメリカの方がはるかにやりやすいです。

SW:特にテキサスはスモールビジネスをすごく優遇していると思います。だからローカルの人の中でも、個人事業主として何かやってる人がすごく多い。

OA:それに、そういう活動に対して温かい人が多い気がします。

SW:スモールビジネスを受け入れてる文化なんですよね。西海岸ではこういうことはできない。

OA:西海岸は厳しいですよね。スモールビジネスをするには全米で一番規制も環境も厳しいエリアと言われている。


お:現地の方と、日本の方とではお客さんの反応はどのように違いますか?

SW:最初に始めた時はコロナ禍で、お客さんは駐在の方が多かったですが、現在はほとんどがローカルの方ですね。おそらく日本の円安の影響なのか、以前に比べてお買い物に来る日本の方がすごく減りました。食品をオンラインで買われる方が増えたというのもありますが、色々なものが値上がりして日系スーパーからは足が遠のいていると感じます。コロナが終わったあたりから本当に日本人のお客さんが少なくなりました。

OA:私は最初から現地のお客さんばかりです。もともと日本の方には、和菓子は100円200円で買えるものと認識されているので、4ドルを超えてくるとなると高いと思われてしまう。それは日本で販売している時もずっと悩んでいたことで、洋菓子に対して和菓子は安いと認識される傾向にあるんです。洋菓子の方が原材料が高いのはわかるけれど、和菓子も手間は同じようにかかっている。でも和菓子に対するイメージが低すぎるんです。


お:確かに和菓子屋さんってスーパーで売っているような日頃のおやつか、ちょっと敷居の高い高級品かの二極化しているような気がします。

OA:そうなんです。なので日本で販売していた時は、その中間をターゲットに、「おやつとしては少し高いけど、良い材料を使って手をかけている和菓子」というラインナップを打ち出していました。こちらで販売を始めるにあたっては、日本価格をベースにするのではなく、こちらで売られているアジアのスイーツのサイズや値段を参考に調節して、ブランドとしての価格で設定しています。買ってくださる方は、ほぼアジア人や永住の日本の方ですね。でも、やはり日本から来られた人から見れば高いと思いますので、そこはもう仕方がないかなと。

SW:販売を始めた頃は、駐在の方も、こちらにいる間も日本のものが食べたいという感覚で買われる方が多かったんですよ。今は逆に、アメリカにいるのは期間限定なんだから、帰国するまで日本のものは我慢しよう、という考えに変わっていっているように思います。教育費などと天秤にかけたときに、食費は一番セーブしやすいですからね。でもアメリカは外食文化なので、意外とそこは削らない。値段の高さに慣れている、という面もあるのかも。

OA:むしろ現地の人からは安いって思われてるくらいです。なので常連の方で毎週来てくれて、まとめ買いされる方もいらっしゃいます。


葵さんとあやさん。



お:どんな商品が特に人気ですか?

OA:いちご大福はいつでも人気ですね。MOCHIが広く知られているので、初めての人でも受け入れてもらいやすいんです。中に新鮮ないちごが入っているのもフレッシュなイメージが湧きやすい。何か全く聞いたことのないようなものよりは、食べ慣れたものが入っていて、食べる前のイメージがしやすいものだと新しい日本のスイーツというポジティブな見方をしてもらえる。

SW:今は特に抹茶ブームも来ていて、抹茶関連の商品もよく売れていますね。

OA:味のイメージがしやすいと受け入れられやすいようですね。似たような商品があるので、アジア圏内の人たちに和菓子を発信するのはハードルが低いです。例えばわらび餅は、韓国で同じようなものがあるらしく、アジア系の方に人気です。アジア以外の方へ発信するには、まずは日本文化や日本食が好きかというところを押さえていかなければならないですね。現地の好みに寄せることも多少はしますが、あまりにも寄せすぎてクリームとかチーズとか乗せてってなると、それはもう、私の商品でやる必要はないんじゃないかと思います。

SW:日本のパンの流行りも無視できないので、そこも意識しつつ、こっちで売れるものを作りたいですし、古き良き日本のパン屋さんのようなラインナップを心がけているのですが、今風に落とし込みたいっていう気持ちもあります。

あとは季節も意識しています。今は秋だから、かぼちゃとか、栗とか、さつまいもを使ったものを出しています。そうするとやはり季節限定のものから売れていきます。前回かぼちゃのスコーンを出したらやっぱりそれが人気だったし、春だったらイチゴがやっぱり一番。こっちでは材料は年中出回っているけれど、やはりイメージ的に季節のものが売れていくというのはあります。


お:聞いているだけで涎がでてきますね。日本は季節によって旬も行事も多いので、季節の商品が出れば「一年待ってました!」って飛びつきたくなりますが、こちらでも季節ものは人気なんですね。アメリカではあまり旬の食材というイメージがないのですが、材料の調達は日本と比べていかがですか?

OA:毎回、品質がいいものが出まわっているとは限らないので、調達が大変なこともありますが、フルーツ等はこちらの方が気軽に取り入れやすいです。例えば、日本ではいちごは高級すぎて、もはや大福に入れるにはもったいない。なので日本ではいちご大福は販売していなかったんです。でも、こちらでは手頃な価格で売られています。マンゴーやアプリコットやブドウなども割と安価なので、ソースやゼリーにしたり。杏仁豆腐の代わりにアーモンドミルクを固めてフルーツのソースをかけたものも作りました。

見た目を洋菓子っぽく見せつつも、材料は和菓子ベースにして、和菓子の要素を大切にしながら新しい展開を増やしていきたいですね。



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後編では大変だったことや嬉しかったことなど、更に深掘りしていきます。後編も是非ご覧ください!


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